【インタビュー】2020年11月7日(土)田中真緒ピアノリサイタル

【インタビュー】2020年11月7日(土)田中真緒ピアノリサイタル

2020年11月7日(土)に日暮里サニーホールコンサートサロンで田中真緒ピアノリサイタルを開催いたします。リサイタルに向けて田中真緒さんにインタビューいたしましたので、ご覧ください。

インタビュー

今回のリサイタルに向けての抱負を教えてください。

日暮里サニーホールコンサートサロンでリサイタルをさせていただくのは今回が初めてです。このような大変な状況の中、リサイタルを開催していただけることをとてもありがたく、嬉しく思っています。一人でも多くの方に、聴きに来れて良かったと思っていただけるような、充実した時間にしたいと思っています。

演奏する曲の聴き所などを教えてください。

今回は「イメージと幻影」をテーマに3作品を選ばせていただきました。遠い日の思い出や異国の景色、音楽以外の芸術作品などが、作曲家の感性を通していかに音楽に落とし込まれているのか、ということを感じていただけるようなリサイタルにしたいと思っています。
・F.ショパン 《舟歌》 op.60
ショパン唯一の《舟歌》は、1845年から翌年にかけて作曲されました。この頃のショパンを取り巻く環境は最悪と言っても過言ではありませんでした。持病の悪化に加え、恋人のサンドとの関係も終わりを迎えようとしていたからです。そんな中、ショパンの故郷への思いは増すばかりでした。ショパンは舟歌と同時期に歌曲《孤独》を作曲しているのですが、友人でもあるザレスキの詩の一節は、ショパンの胸中を掬い出しているようにも思えます。「寂しい異国の地で、わたしは故郷にいるかのような夢を見る」ヴェネツィアのゴンドラ乗りの歌を連想させるタイトルを持つこの作品は、ショパン生前最後のリサイタルでも演奏されました。波のリズムや調性は次々と移ろい続け、それはまるで夢と現の境目を、あの世とこの世の狭間を彷徨っているようです。明るい調性の中にショパンの痛みや哀しみが透け、美しさと同時に儚さも併せ持っている作品です。
・F.リスト 《スペイン狂詩曲》 S.254
この作品がいつ作られたかに関しては諸説ありますが、1858年が最も有力とされています。この頃は長年務めたワイマールの宮廷学長を辞任し、僧籍に入るまでの時期にあたります。かつて演奏旅行で訪れたスペインの印象をもとに作曲されたと考えられていますが、青春時代をハンガリーとドイツで過ごしたリストにとって、その印象は強烈だったのでしょう。まるで協奏曲のカデンツァのような序奏を経て、2つのスペイン舞曲を軸に曲は華々しく展開していきます。まず、イベリア半島が起源とされる緩やかな3拍子が特徴のフォリア。そして曲の中盤で、スペイン北東部で歌い踊られている軽快なホタ・アラゴネーサが登場します。これらがリストの音楽語法によって、圧倒的なクライマックスに向けて昇華されていきます。
・M.ムソルグスキー 組曲 《展覧会の絵》
1874年、ムソルグスキーが35歳の時にわずか3週間で書き上げられた作品です。ムソルグスキーの友人である画家が早世し、彼の遺作展でインスピレーションを受けて作曲されました。副題には「ヴィクトル・ガルトマンの思い出に」と記されています。ムソルグスキーが組曲の中で取り上げたヴィクトル・ガルトマンの作品は多岐にわたります。パリのテュイルリー公園や地下墓地を舞台にした絵画、バレエ衣装のスケッチ、大きな門の設計図……。そして曲と曲の間に、ムソルグスキーが展覧会を歩く様子を表現したプロムナードが随所に挿入され、まるで私たちもムソルグスキーと一緒に作品を鑑賞しているように感じられる作品です。30分を超える長い作品ですが、ぜひ最後まで楽しんで聴いていただけたら嬉しいです。

あなたにとって音楽とは何ですか。

さまざまな思いを他のたくさんの人と共有することができるものです。ドイツに留学していた時に特に強く感じたことでもあります。言葉による意思疎通が不自由でも、共に音楽を聴いたり演奏したりすることで、互いに共感したり理解できることは貴重なことであり、素晴らしいことだと思っています。今年の前半は大変困難な状況が続き、演奏の機会を多く失い、殊更にそのことを痛感させられました。今後より一層、舞台に立てるありがたさを噛みしめながら、演奏を続けていきたいと思います。

演奏会情報

2020年11月7日(土)田中真緒ピアノリサイタル
会場:日暮里サニーホールコンサートサロン
時間:19:30開演(19:00開場)
料金: 全席自由 2,500円

出演者

田中真緒
Mao Tanaka

桐朋学園大学音楽学部、同大学院音楽研究科を卒業。ドイツ・マンハイム国立音楽芸術大学修士課程を首席で卒業。ヴィラ・フランカ・ディ・ベローナ国際コンクール第2位、ピティナ・ピアノコンペティションG級入選等、国内外で多数受賞する。

曲目

F.ショパン:舟歌 Op.60

F.リスト:スペイン狂詩曲 S.254

M.ムソルグスキー:展覧会の絵 他