2015年9月19日(土)TIAA音の博覧会 2015 PART 2【ギャラリー】

2015年9月19日(土)TIAA音の博覧会 2015 PART 2【ギャラリー】

2015年9月19日(土)に日暮里サニーホール コンサートサロンにて
『TIAA音の博覧会2015 PART 2 未来に残すべき俊英作曲家による作品群』 が開催されました。
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TIAA全日本作曲家コンクールの受賞者によるコンサート『TIAA音の博覧会』ですが、2013年に開催して以来、2年ぶりに今年の7月と9月に同コンサートを開催いたしました。
ベートーヴェンやモーツァルトといった神格化された作曲家も、同時代に生きていたらどんなお話を聞かせてくれるのだろうと思うのですが、せっかくですから同時代に生きている作曲家たちに作品についてのお話をしていただく機会を設けました。
現代に作られているせいで「ゲンダイオンガク」と遠ざけられがちな新作たちを、身近に感じて頂ければと企画させていただきました。
 
 
 
池田文麿 作曲
「お七幻想」~芝居人形の為の~
 演奏:井上喜義(尺八) 井上久子(十三絃筝)
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<曲目解説>
以前から「八百屋お七」を題材としたオペラを書こうとしていましたが、まず劇中の音楽要素を含んだ前奏曲を作ろうと思い立ち、さらに日本の歌劇なので和楽器でも演奏可能なものにしたいとも思いました。そんな中で私が習っている現代尺八の師匠・井上喜義氏と奥様の筝演奏家・井上久子氏の助言を得ながら作曲した近現代作品です。女性の情念を描きました。
<演奏曲誕生秘話・最近の主な活動・今後の主な活動予定>
和楽器は限られた調弦や笛穴です。しかしその制約の中でしか表現できない独特の味わいがあります。それがわかってくると均一な12音の半音が出る西洋楽器が物足りなくなってきます。現在、曲目解説に書いた井上氏の依頼を受け、クラシック音楽を和楽器に編曲したり、和楽器と洋楽器を混ぜた合奏曲を作曲をしたりしています。逆に和楽器の為に書いた曲を洋楽器に編曲して演奏しています。昨年、井上さんの師である邦楽作曲家故舟川利夫の傑作「複協奏曲」を和楽器合奏伴奏からピアノ伴奏およびオーケストラ伴奏への編曲をいたしました。日本の名曲として広まって行くことを願っています。
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川越道子 作曲
「Where to?」
 演奏:川越道子(ピアノ)
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<曲目解説>
「Where to?」は一つの楽章から成る、三部形式のピアノ独奏曲です。冒頭部分の主題が、中間部では不協和音と複雑な対位法を用いて展開されて行きます。再現部では和声の変化にコーダを加えて、追想します。大切な人が急逝してしまった。一体何処へ行ってしまったのか。嘆きと叫びと祈りの複雑な心理状況を表現しました。
<演奏曲誕生秘話・最近の主な活動・今後の主な活動予定>
最愛の夫が2年前に病に倒れ、急逝しました。未だに信じられない事実ですが、やっと曲を書けるようになりました。最近の活動は休止状態でした。
来年は海外で尺八音楽の新作発表とワークショップを予定しています。
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津布楽杏里 作曲
「やがて秋‥‥」(詩:立原道造)
「アダジオ」(詩:立原道造)
「唄」(詩:立原道造)
 演奏:津布楽杏里(ピアノ) 江原陽子(ソプラノ)
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<曲目解説>
詩に導かれて曲が完成した。24歳という若さで急逝した立原道造の詩が皆さまに伝わりますように。共演してくださる江原陽子(ソプラノ)氏は東京藝術大学声楽科在学中よりNHK「うたって・ゴー」に歌のおねえさんとしてレギュラー出演。1991年より日本フィル「夏休みコンサート」に歌と司会で出演している。
<演奏曲誕生秘話・最近の主な活動・今後の主な活動予定>
 学生時代から立原道造の詩に親しんでいる。立原道造が気に入っていた長野県の出身でることに親近感を覚える。今後も立原道造の詩に曲を付けていきたい。
現在は短期大学で保育士を目指す学生にピアノを教えている。ピアノの苦手な学生のために童謡などの編曲も行っている。また、童謡の作詞・作曲にも力を入れている。ドレミ楽譜出版より「弾き歌いピアノ曲集」(自作童謡20数曲を含む)が発売されている。今後は自作童謡に振付家が動作を加え、保育現場で使える振り付け集として発表予定である。
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中村未央 作曲
Fomalhaut
牛若丸・五条大橋にて
日記より/今日もひとり,さいごの手紙
 演奏:中村未央(ピアノ)
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<曲目解説>
≪Fomalhaut≫ ≪牛若丸・五条大橋にて≫
標題音楽的な小曲です。フォーマルハウトは南の魚座の一等星で、秋に南の空低くにポツんと光る唯一の一等星で、秋の一つ星ともよばれています。牛若丸~は、皆様ご存知の弁慶とのシーンです。ひらりと身をかわす様子など伝わると良いのですが。
≪日記より・・・今日もひとり, さいごの手紙≫
こちらは、思いつくまま書き溜めている曲たちで、この2曲は新作になります。私の中ではメロディーに歌詞?(日記の文章?)が付いていて、恥ずかしいので内緒ですが、何て言ってるのかなぁなんて想像しながら聴いて頂くといとをかしかもです。
<演奏曲誕生秘話・最近の主な活動・今後の主な活動予定>
最近は、連弾や2台の曲をずっと書いていました。特に、普段は講師業もしておりますので、ド~ソがやっと弾けるような3,4才の小さい子でも弾ける連弾曲をどうにかしたいと思うのですが、限られた音数や無理のないリズムで稚拙にならぬよう作るのには、殊の外難航しております。
日記シリーズは、曲数が増えてきたら、まとめて発表したいと考えています。ちなみに、普通の日記は、人生の中で夏休みの絵日記以外書いた事はありません(笑)
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本田朝子 作曲
竹久夢二の詩による3つの小歌曲集 ~みどりの窓/くれがた/凧~
笑顔をわけあおう
 演奏:本田朋行(テノール) 中野亮子(ソプラノ) 本田朝子(ピアノ)
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<曲目解説>
1曲目は、日本画家であり詩人である竹久夢二の詩集より3作を選んだ連作歌曲。「青春」「絶望」「希望」と、ひとつのストーリーとして構成した。
2曲目は、NPO法人キャトル・リーフのオリジナルミュージカルのために作曲した原曲を、今回新たに2重唱曲として編曲した。作詞:田中由紀子、手話振付:中山愛、松浦喜一。
<演奏曲誕生秘話>
■「竹久夢二の詩による3つの小歌曲集」は、宮帯出版社の竹久夢二詩集百選から詩を選び曲をつけました。作曲にあたり、夢二の他の詩や、絵画の根底に流れる優しさや品の良さ、そして時として垣間見える人間味あふれるところなどを、曲の雰囲気にも反映できるように努めました。
「青春」「絶望」「希望」をキーワードにそれぞれ作曲しましたが、どんなシチュエーションかは特定させず、この曲を聴いている人それぞれのご想像に委ねたいと思います。
(尚、作曲者本人は、当初「恋愛の楽しい時期→あえなく失恋、他のこともうまくいかず落ち込む→立ち直り、新たな一歩を踏み出す決意をする」という仮設定をしながら作曲を進めました。)
■「笑顔をわけあおう」の原曲は、2010年のキャトル・リーフの作品「空まで届け」のテーマソングとして作曲しました。キャトル・リーフは、医療施設や高齢者福祉施設、特別支援学校などで、年間を通じてオリジナルミュージカルをお届けするボランティアを行っているNPO法人です。
今回は、歌詞やモチーフはそのままに、場面設定をがらりと変え、下記のような架空のオペラの一場面を想定し編曲しました。
 悩みを抱えた人間(テノール)が迷い込んだ暗い洞窟のなか、光がさして女神(ソプラノ)が現れる。
 女神は優しく人間に歌いかけ、妖精とともに洞窟の暗闇を光に変え、人間を導き希望を与えていく。
 つらいときには 涙をわかちあい 涙がかわいたら 笑顔をわけあおう
田中由紀子さんの優しく力強い歌詞がまっすぐに届くよう、アレンジは極力シンプルにし、ソプラノの美しい歌声を活かすことを心がけました。
キャトル・リーフのミュージカルは、手話を基にした振付が特徴的なのですが、今回は、冒頭部分をその振りと共に演奏いたします。歌詞の紡ぎだす世界をさらに広げていく、素敵な手話振付にも是非ご注目ください。
<最近の活動と今後の予定>
現在、キャトル・リーフのオリジナルミュージカル「正太と願い石」再演に向け、音楽制作スタッフとして、新曲作成および過去の音楽の手直しに取り掛かっています。
以降も、同法人の生と死を題材にしたオリジナルミュージカルの音楽制作を担当する予定です。(NPO法人キャトル・リーフ)
また、演奏する側としても、東北復興支援のチャリティーコンサートに参加したり、オーケストラ付きの合唱曲に対する理解を深めるため、東京シティ・フィルハーモニック管弦楽団の専属合唱団である東京シティ・フィル・コーアのメンバーとしても活動しています。
これからも、聴く人、演奏する人双方の気持ちに寄り添うことのできる、そんな曲を作っていきたいです。
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川村菜穂子 作曲
月に琴弾きたるを聞きて ~紀貫之の和歌による3つの小品~
 演奏:古川真帆(ファゴット) 丸山佳織(ファゴット) 川村菜穂子(ピアノ)
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<曲目解説>
貫之集による屏風の歌3首より。
第1曲:男が弾く琴の音に女が聞き惚れる情景、小ロンド
第2曲:女の募る恋心、オスティナート風小品
第3曲:男が琴の音に籠めた思い、自由なソナチネ
各曲に、男が弾いたとされる琴の名曲「白雪」の引用、「白(=しら)雪」のシ・ラの音、「琴(=こと)」の5・10度音程を用いた。
<曲について・最近や今後の活動など>
・編成は初めに決めた。最初に演奏者を募ってから曲を考えようと思い、知り合いに声をかけたところ、古川さんが興味をもってくれ、さらに丸山さんを誘ってくれた。
・演奏会の9月にふさわしい曲ということで、月にまつわる文学作品を探していた。ちょうど貫之集の中に月にまつわるロマンチックな作品があることを知り、また琴(音楽)にも絡んでいた内容だったのでこの和歌3首に決めた。
・イメージを固めるために、静岡県浜松市北区の龍譚寺(りょうたんじ)に1日居座り、そこで筆を進めていた。日本風の建築物と風景に浸りたくて、自宅からほどほどの距離という理由で。観光に来ていた人とも仲良くなり、心温まる旅となった。
・今年で作曲を初めてから20年になる。
・現在、平日は浜松市の楽器工場で鍵盤ハーモニカ制作の仕事
・現在、土日は地元のこどもミュージカル(自身はOG)で伴奏ピアニスト
・その他、不定期でミニコンサートを企画して過去20年間の作品を順番に発表、その際の音源はYouTubeで公開している。
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松下行馬 作曲
島神楽Ⅱ
 演奏:板井美知(ソプラノ) 細川恵美子(ピアノ)
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<曲目解説>
《島神楽Ⅱ》は,離島の神楽を題材にした「島神楽」シリーズの第2作目である。長崎県平戸島に伝わる平戸神楽に基づいたソプラノとピアノのための作品で,本演奏会のために書き下ろしたものである。全24番の舞の中から,核となる「岩戸神楽」を中心に,実際に歌われる歌や囃子のコラージュによって構成されている。 (※島神楽ⅡのⅡはローマ数字の大文字でお願いします)
<演奏曲秘話>
 平戸神楽は毎年10月26日に奉納されます。平日の場合が多く,これまで機会がとれなかったのですが,昨年,時間がとれましたので,実際に足を運び,全24番を鑑賞しました。その時に,他の離島の神楽と比べて明るい調子であることにインスピレーションを受け,作曲の構想を温めていたところ,本演奏会のお話があり,この度の初演の運びとなりました。
<今後の活動の予定>
 「島神楽」シリーズの第3作目で,島根県隠岐島前(どうぜん)神楽を題材にした《島神楽Ⅲ》を11月10日に兵庫県西宮市にて発表します(現在作曲中)。また来年夏には,「島神楽」シリーズをはじめ,日本の郷土芸能を題材にした歌曲を集めたCDが, ファウエム・ミュージック・コーポレーション より発売の予定となっています。
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北川真里菜 作曲
ピアノのための小品 Ⅰ.「黒」 Ⅱ.「白」
 演奏:北川真里菜(ピアノ)
20150919音の博覧会part.2_北川1

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<曲目解説>
「相反するものは、その奥深く通ずる所で表裏一体である」。同じ動機を使って、どこまで自分なりの「黒」と「白」の世界観を広げ表現できるのか、自分と向き合いながら曲にしました。
<最近の主な活動・今後の主な活動予定>
今作品は、様々な楽器編成の楽曲を書くなかで、私の原点であるピアノという楽器に立ち返りたいと思い、ピアノ独奏のための曲としました。
最近の主な活動としては、海外への音楽留学、演奏活動、委嘱作品の作曲などを手掛けています。普段は、小学校教諭として子どもたちと一緒に音楽を楽しんでいます。
ヨーロッパへの留学で、日本独特の雰囲気や良さをより感じることができ、今後は環境を生かして東洋的な旋律を深めた作品づくりにも挑戦できたらと考えています。
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また今後もこうした演奏会を企画して参りたいと存じます。