TIAA音の博覧会(批評掲載)

TIAA音の博覧会(批評掲載)

1ヶ月前の話となりますが、2013年2月17日(日)に『TIAA音の博覧会』が開催されました。

弊会の『TIAA全日本作曲家コンクール』で過去に入賞された方々による新作・旧作の発表の場として企画させていただきました。作曲家の発表というのは楽譜の出版だけではなく、実演されて音として耳に届くことで初めて大衆の中に受け入れられていくものと思いますので、今後もこうした機会を増やしていきたいと思っております。

私がMCを担当させていただいて、コンクール入賞作曲者とおしゃべりしながら作品を紹介するスタイルで進行させていただきました。耳に心地よい作品から、いわゆるゲンダイオンガクという作品までありますので、MCで少しでもお客様の好奇心を揺り動かせたら、作品の中に入っていきやすい心の状態に持っていけるのでは、と思った次第です。

さて、そうした演奏会の批評記事が『音楽現代』4月号に数ページ(148~150ページ)にわたって掲載されました。写真も結構なスペースを割いて載せていただいてありがたい限りです。
この場を借りまして、批評をご執筆下さいました福田滋様に御礼申し上げます。

以下は、当日に配布したプログラムと、当日撮影された写真です。

畑中雄大 作曲

■ ジャズ舞曲 第5番
■ 愛のメロディー
【演奏】畑中雄大(ギター)
【解説】「ジャズ舞曲第5番」:学生時代に育った地元仙台は非常にジャズが盛んで、年に1度行われている定禅寺ストリートJAZZフェスティバルが行われており、そちらにも毎年参加しております。ジャズタッチで曲を書き進める事が自然と楽しくて、この作品以外にも多数ジャズ系を作曲しております。ジャズ舞曲集は現在全7曲です。その中でもギター独奏の為に書かれたのが第5番です。技巧の制約が多い上に音量の非常に小さいギターでして、楽器為に調はホ短調となっております。撥弦楽器と合わせて、少し尖った響きに敢えて仕上げました。
「愛のメロディー」:東北人は、あまり口には出しませんが、義理人情が非常に厚いです。「いつも良くしてくれてありがとう!これ持ってってけさいん!」という感じで演奏者へ手渡したのがこの曲です。なんといっても感謝の気持ちを“楽譜”という形で渡したかったのが可愛い女の子でしたから。笑顔の可愛い女の子なので、是非とも弾いて笑顔になれる曲をと作曲しました。調も明るいニ長調で、且つ歌いやすく作曲しました。本人も気に入っているようで何よりです。

川越道子 作曲

■ Connexion for Viola and Piano
【演奏】脇田優子(ヴィオラ) 川越道子(ピアノ)
【解説】“Connexion for Viola and Piano”は小さな三つの楽章から成り、増4度音程を軸に構築されている。二つの異なる楽器のそれぞれの奏者の行動とそれに伴う出来事の関係性を共有する空間と時間の中で追求する。ヴィオラの音色の繊細で微妙な変容の美しさをピアノとの対比により表現した。

清道洋一 作曲

■ 風は静かに燃えて…
【演奏】田口薫(ヴァイオリン) 並木桂子(ピアノ)
【解説】「風は静かに燃えて…」は,ヴァイオリニスト田口薫のために作曲したものです。
曲名の「風は静かに燃えて…」は,5月のある朝思いついた「風は静かに燃えて,青き光を水面(みなも)に投影する」という言葉によりますが,特に文学的,情景描写的なものではなく,「風」や「青」という言葉自体が,私に特別な感情を抱かせるものであることを告白しておきます。
全曲は,冒頭のヴァイオリンで提示されるso-la-fa#―後半ではsi-do#-la―を統一要素としながら,私が好む「序破急」の形式で自由に作曲しており,演奏時間はおよそ10分です。

関本幸子 作曲

■ ピアノのための三つの小品
【演奏】関本幸子 (ピアノ)
【解説】本楽曲は3楽章から成り立っています。第1楽章は、単音の連打の響きから導かれる渾沌とした世界をくりひろげ、第2楽章は、コラール風な重音の変拍子から始まるパッサカリア風、第3楽章は、3拍子と2拍子の混合拍子による活発な自由な展開により、意表をつく終止となっています。

松下行馬 作曲

■ 島神楽 Ⅰ
【演奏】板井美知 (ソプラノ) 細川恵美子(ピアノ)
【解説】《島神楽Ⅰ》は,長崎県五島列島で伝承されている上五島神楽に着想を得て,本演奏会のために書き下ろした作品です。神楽の起こりが説かれ,舞座に神が招き入れられ,そして神楽が次々と舞われていく中で人々の心が一つになっていくという様を,実際の神楽歌,舞立言,囃子をコラージュしながら描いています。

中野恭子 作曲

■ ひ天
■ 約束
【演奏】中野恭子(ピアノ) 伊多倉潔(サクソフォン) MDあり
【解説】「ひ天」:3楽章からなるこの曲は天空を馬に乗って駆け抜ける、そして天のおひさまの昔から変わらない慈しみの心をイメージして作りました。
「約束」:約束を交わした恋人どうしのこれからの不安や期待がいれ混じった複雑な心の動きを美しいサックスのバラードにのせて、表現しました。

洪純純 作曲

■ 空間三重奏-フルート、ヴァイオリン&ピアノ
【演奏】松野健(フルート) 福本牧(ヴァイオリン) 洪純純(ピアノ)
【解説】1.伝統的な音楽形式でじゃなく、テーマとリズムの音楽空間カラーを探して、 異なる楽器から 伝えます。
2. テーマ、 楽句、と時間、または 楽器のレジスタから、音楽空間のふくらむとデフレを創造する。
3. 八つセクションに 発展する:主題の行進 – 違う調性の空間組合せ – 空間の占領 – 空間の伝播 – 自由の空
  間 – 空間の沈澱 – 空間のオーバーラップ – 空間のリターン。

高橋涼 作曲

■ 三次元クリスタルエフェクト
【演奏】吉崎奈生子(フルート) 高橋和歌(ヴァイオリン) 相中彩(チェロ) 高橋涼(ピアノ)
【解説】各楽器が異なるテンポ感覚で重なり合いながら、ひとつの音響的なオーラのようなものへと収斂され、ときにはクリスタルのような輝きを放ち、ときには混沌としたエネルギーの塊へ埋没しながら、立体的な音響を構成するべく突き進む。そのイメージをもとに作曲しました。

松原SHINJI 作曲

■ 夜笛(やぶえ)
【演奏】松野健(フルート) 岩谷明希音(ピアノ)
【解説】この曲は五条大橋の伝説をぼんやりと想いながら作った。それも橋弁慶のストーリーの方で、牛若丸が殺戮者である方が笛の魔力は増すように思う。牛若丸が吹いたのは竜笛らしいが、その所作に無知なので演奏経験のあるフルートを使う、奏者に委ねるしかない。変イ短調(調があるとすれば)調号の一番多いのになった。

野村朗 作曲

■ 歌曲「春のあはれ」 詩 三好達治
■ 歌曲「願わくば」 詩 三好達治
【演奏】森山孝光(バリトン) 森山康子 ピアノ
【解説】歌曲「春のあはれ」萩原朔太郎の妹、愛と三好達治は、戦時中にも関わらず、福井県三国港へ妻子を捨てての逃避行を断行するが、程なくして破綻し、天涯孤独の漂泊の詩人と化す。この詩は、そんな達治が、海辺を逍遥しつつ、手の届かない萩原愛に遠く思いを馳せるという内容。
歌曲「春のあはれ」上述の「逃避行」とその破綻までの間、書き綴られた達治渾身の絶唱、詩集「花筐(はながたみ)」の結びの詩。「私が死んだら、梨の本を植えて欲しい。初は白い花が咲き、秋には甘い実が実るだろう。自分の詩は忘れ去られても、その木が残り、旅人が馬を繋いで休む様子など、後の世を想像するのも楽しいことだ」と歌う。恩師、横井園生氏の霊前に捧げる。

村尾なつめ 作曲

■ 祈り ~ソプラノとピアノのための~
【演奏】辻岡美沙子(ソプラノ) 村尾なつめ(ピアノ)
【解説】音名を分断させ、音そのものから音列と歌詞を抽出した。(解説省略)
※得られた歌詞全文
坊やは父母と遊び/空は朱色に/村には僕と汀線/陸と空見れば/死と弔い/空は至幸を問い/外は陸と空/
一向に無下
モチーフにした音名、楽器固有の名称(絃名等)は日/英/伊/独、邦楽器の篠笛、篳篥、尺八、笙、琵琶、箏。

【作曲者プロフィール】

畑中雄大

国際新堀芸術学院卒業。寺田和之氏にクラシックギターを師事。高校時代に、自転車でどこまで行けるかを挑戦し、宮城県仙台市~青森県八戸市を往復。大学在学中は音楽の感性を求め、イタリア10日間、フランス86日間の一人旅。2009年3月に作曲個展演奏会が実現。

川越道子

アメリカとイスラエルで作曲を学ぶ。多岐にわたる作品はアメリカ、ヨーロッパ、日本で演奏され、アメリカ主要都市のFMラジオやドイツのWDR、ロシアの民放などで放送されている。SYNTALと呼ばれる電子合成音を使用した電子音楽作品や邦楽器を用いた作品などを精力的に発表している。国内外の作曲賞を多数受賞。

清道洋一

1966年 長野市出身。劇団「萬國四季協會」,「トロッタの会」その他で研鑽をつみ,音楽と技術の力で世の 中をより良く,より楽しくすることを目的に「東京博物研究所」を設立,技術者として,コンクリート構造物の調査,研究,診断等のサポートと,作曲,編曲, 舞台演出他,自然科学と芸術の一体化,もしくは両者の周縁での表現活動の展開を模索中である。

関本幸子

武蔵野音楽大学卒業 同大学院修士課程作曲専攻修了。平成元年度福井直秋記念奨学生。作曲を、金光威和雄、田辺恒弥、ピアノを、秋山章恵、河村康士、小野茉莉子、北條陽子の各氏に師事。現在、東京国際芸術協会、全日本ピアノ指導者協会各会員。

松下行馬

1968年大阪府生まれ。神戸大学教育学部音楽科卒業。兵庫教育大学院修了。作曲を中村茂隆氏に師事。第1回阪神ニュー・アーティストコンテストにて《灘の酒造り唄》が兵庫県知事賞を受賞。第2回TIAA全日本作曲家コンクール日本歌曲部門にて《隅田川》が入選。他に《BARONG》《KAGURA》などの作品がある。

中野恭子

高校卒業後ヤマハ音楽教室講師になる。2002年アレンジ大会で優秀賞を受賞。ヤマハ演奏グレードの課題曲となる。第12回TIAA全日本作曲家コンクールにて入賞。作曲、アレンジも多く手がけている。

洪純純

台湾台北生まれの女流作曲家、米国ニューヨークのマンハッタン音楽院で学士課程とカルフォル二ア州立大学バークレー分校で修士課程を修了し、パリ国立高等音楽院で作曲を勉強し、UCLAエクステンションで、映画音楽を学びました。弦楽四重奏とピアノ、バスクラリネットソロ曲は第11回TIAA全日本作曲家コンクールで入賞した。

高橋涼

1983年、神奈川県生まれ。作曲を太田彌生、石川和男、今堀拓也、ピアノを三浦裕美、江夏範明、江夏祐子、若土規子の各氏に師事。第11回TIAA全日本作曲家コンクール室内楽部門入選。第17回国際ピアノデュオ作曲コンクール音楽之友社奨励賞。東京国際芸術協会、国際ピアノデュオ協会、各会員。

松原SHINJI

早稲田大学卒業。元潮流詩派、コスモス文学会同人。公益法人「緑と文化と福祉の街」代表理事。竹友会同窓。東京国際芸術協会会員。

野村朗

名古屋音楽短期大学音楽科作曲専攻卒業。小櫻秀爾氏、故有賀正助氏に師事。透析歴37年。私大に勤務しつつ作曲活動を継続。ミュージカル、歌曲、室内楽等作品多数。第12回TIAA全日本作曲家コンクール歌曲部門入選。

村尾なつめ

作曲・音響・映像を学ぶ。コンサートピース、映画、広告音楽等ジャンルレスに活動を展開。自身の器楽曲初演を軸に企画したフリーコンサートでは好評を博す(2011年8月、11月東京)。www.omagt.com