2015年7月25日(土)に日暮里サニーホール コンサートサロンにて
『TIAA音の博覧会2015 PART 1 未来に残すべき俊英作曲家による作品群』 が開催されました。
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TIAA全日本作曲家コンクールの受賞者によるコンサート『TIAA音の博覧会』ですが、2013年に開催して以来、2年ぶりのコンサートとなります。
ベートーヴェンやモーツァルトといった神格化された作曲家も、同時代に生きていたらどんなお話を聞かせてくれるのだろうと思うのですが、せっかくですから同時代に生きている作曲家たちに作品についてのお話をしていただく機会を設けました。
現代に作られているせいで「ゲンダイオンガク」と遠ざけられがちな新作たちを、身近に感じて頂ければと企画させていただきました。
 
 
 
関口ちあき 作曲
真珠はパリ色の夢を見ている 演奏:関口ちあき(ピアノ)
白雪の夜 演奏:林拓馬(テノール) 関口ちあき(ピアノ)
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<曲目解説>
パリ・セーヌ川の情景を音にした。詩(オリジナル)~甘く光る真珠よ 水の底に優しい 涙の粒 泣いているのか ああ私が人魚だったらおまえを抱いて眠るのだろう~
「白雪の夜」 冬の夜、雪を見た時の心象。詩~白雪の微かに降る夜 光をみつけた
閉ざされた君の心に夢と涙が指紋をつける~
<演奏曲誕生秘話>
「真珠はパリ色の夢を見ているについて」パリに留学していた時セーヌ川の美しさに惹かれ曲を作りました。日頃から水を尊敬しています。水のような生き方が素敵だと思います。私の作品に水のバレエという曲があってやはりそれも水をテーマにしています。今回は特に「波の細やかで繊細な動き」にこだわり作曲しました。とめどなく広がる様子を作るのにピアノを弾かず頭の中で作る、あえてそうしたいと思い空想の世界で作りました。
「白雪の夜について」雪もまた冬の水の姿です。雪が降ると全て真っ白に覆われて普段と違ったもののように映る。現実の(メカニックな)世界ではないような自然の神秘的な世界を作りたかった。
<最近の活動と今後の予定>
毎年秋、札幌コンサートホール・キタラでピアノリサイタルを行っています。そのライブ録音のCDも2枚出しました。それから最近はピアノ、詩のほかに「絵を描く」ことを始めました。600点以上の作品ができたので、8月に個展を開きます。二刀流デビュー?です。

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末岡武彦 作曲
譚詩曲 第三番 (Ballade No.3) 演奏:末岡武彦(ピアノ)
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<曲目解説>
京都の冬空に鶴が飛翔する。日本の田園では中世まで人と鳥が自然に交流したそうな。いにしえでは鶴・鸛・朱鷺・白鳥と人が交わり美しい瞬間に耽美歓喜した事でしょう。天孫降臨を経て、嫋やかな王朝が成立しましたが、世は余りに変わり果てました。しかし美しい記憶は永遠に残ります。形式:ロンド+単一主題ソナタ+終曲
<演奏曲誕生秘話・最近の活動、今後の活動>
(リーフレットをお持ちになり、終演後に配布されていらっしゃいました)
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木村恵理 作曲
空のように (詩:八木重吉)
わたしと小鳥と鈴と (詩:金子みすゞ)
ゆづり葉 (詩:河井酔茗) 演奏:東誉子(ソプラノ) 山田智恵(ソプラノ) 木村恵理(ピアノ)
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<曲目解説>
「空のように」「私と小鳥と鈴と」…シンプルながら心に深く響く言葉、「ゆづり葉」は子供達への愛情と希望に満ち、自信を持って人生を歩める勇気を貰えます。どれも大人から子供まで親しめるように、そしてこれらの詩が未来に語り継がれるよう心から願って作曲しました。
<演奏曲誕生秘話・最近の活動、今後の活動>
本日演奏する曲で特に思い出深いのは「空のように」です。この曲は私が初めて作曲した曲で、まとめるのに苦労したのを覚えています。その後合唱にも編曲し、合唱団で歌って頂いたりしています。
最近ではチェンバロ奏者としての活動もしています。やりたいことは沢山あるのですが、今後も心に感じるままに作曲の活動もしていきたいと思っています。

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野村朗 作曲
挽歌 (詩:井上靖) 演奏:森山孝光(バリトン) 森山康子(ピアノ)
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<曲目解説>
私の親友で作曲家、愛知淑徳大学教授だった堀江幹雄氏が癌に倒れ不帰の人となったのは、昨年3月27日のこと。私は彼の遺志を継いで出身大学同窓会会長を引き受け、その最初の事業として「追悼演奏会」を企画。この作品、歌曲「挽歌」は、親友・堀江幹雄氏追悼の作品として作曲したものである。昨秋、名古屋市内で初演した
<作品制作の周辺について・エピソードなど>
上記の解説に尽きるところがあります。
私は、この作品を紹介すべき適切な言葉を持ち合わせません。きっと奥歯を噛みしめてじっと我慢しておられるであろう彼の奥様に、「泣いていいんだよ」と伝えたかったのだと思います。悲しいのだから、とてつもなく悲しいのだから、髪振り乱して泣き叫ぶ瞬間があって良い。我々生き残った者の明日のため、そしてもう明日を語れない者のために。
プログラムに、詩「挽歌」の全文を添えます。静かに黙読して下さい。この詩が、全てを雄弁に語ってくれることでしょう。

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綿引浩太郎 作曲
フルートとピアノのためのソナチネ 演奏:鈴木舞(フルート) 綿引浩太郎(ピアノ)
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<曲目解説>
全4楽章、1楽章は不安と安堵、苦悩と解放、2楽章は湧き上がる力強さ、3楽章は穏やかな雰囲気を、続く4楽章は澄んだ心を意識して書きました。繰り返される主題が、様々に形を変えて色彩が変化する様をお聴きください。1楽章ではソナタ形式が淡く感じられますが、曲の構造も主題の色彩に沿って変化していきます。
<演奏曲誕生秘話>
4年前にTIAAの作曲コンクールでクラリネットとピアノの為の作品を発表させていただいて以来の管楽器のための曲です。その当時もピアノとの二重奏でしたが、今回もフルートソロとはせず二重奏曲を作曲しました。自分が書きたいものは、前衛音楽の延長線のような現代的な奏法で構成するソロ作品ではなく、ピアノと一緒に演奏することで和音が響く音楽だと思っています。また基本的な演奏以外の奇抜な事は一切しないようにしています。楽器本来の美しい音色を、どれだけ新しい曲の中で綺麗に響かせられるかを考えて作曲しました。
フルート作品の演奏会にも足を運び、モーツァルトのような古典作品からフランスの近代作品、そして現代音楽などまで様々な曲を聴きました。現代音楽については、自分で様々な奏法を勉強した後、演奏していただく鈴木さんにも実際に吹いて頂き、様々な奏法の実際を教えていただいたにも関わらず、実際には楽曲で一つも使用していません。現代を生きる私が書いているので「現代音楽」ですが、狭義の意味での「現代音楽」では無いかもしれません。
 クラッシックだけでなく、ジャズやポップスも好きで、全種類の音楽が異種格闘技戦をする映画音楽も好きなので、クラッシックを土台にしながらも様々な表情を取り入れて作曲したつもりです。
<最近の主な活動>
昨年は映画『孤島の誓い』の音楽を担当させていただきました。たまに映画の依頼が来ると音楽を書かせて頂いています。また、演奏会用に編曲などもさせていただいたりしております。こちらもコンスタントにではなく、依頼が来たら対応する感じです。メインの活動はどこからの依頼でもなく、自分が書きたい新しい音楽を書いています。
<今後の主な活動予定>
去年は弦楽四重奏の第一番を書きましたので、今年は弦楽四重奏の第二番を作曲する予定でいます。

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横田直行 作曲
無伴奏ヴィオラソナタ第1番「フモレスケ」 演奏:加治友理(ヴィオラ)
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<曲目解説>
この作品は第2番の無伴奏ヴィオラソナタの冷静・落ち着き・外部へのエネルギー発散といった性格とは対照的に滑稽で内面的な活性に満ちた一面を持っています。「フモレスケ」というタイトルは喜び・悲しみ・笑い・涙などの多様な感情の混交を言い、記憶に残りやすい音色・リズムをイメージして創作しました。
<今後の主な活動>
室内楽の創作のほかにエドガー・アラン・ポーの作品を原文でオペラにする構想があります。そのため、苦手な英語を駆使しようと、あらためて英文学を学び始めています。

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村尾なつめ 作曲
組曲「遠くからの声」
1.遠くからの声 2.白桃 3.切花 4.糸(作詩/塔和子) 辻岡美沙子(ソプラノ)・村尾なつめ(ピアノ)
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<曲目解説>
テキストはハンセン病により壮絶な人生を送った詩人塔和子さん(1929~2013)より四編の詩をお借りして組曲とした。付曲、実演に際して著作権継承者様にご快諾をいただいた。本日、お迎えするソプラノ歌手は今春、墨田区で上演された「メリー・ウィドウ」ヴァランシエンヌ役の好演が記憶に新しい辻岡美沙子さん。
<最近の主な活動>
7月24日にウインズスコアより、「ひとひら」(クラリネット三重奏曲)を出版。
http://brass.winds-score.com/?pid=91816351
<演奏曲誕生秘話>
2013年開催の瀬戸内国際芸術祭を通じて
塔和子さんがお暮らしになっていた療養所(香川県)に訪問した経験がある。
本格的なコンサート用歌曲の創作が初めての経験であり、当初はテキスト選定と日本語の取り扱いの難しさを感じていた。
日本語の抑揚や言葉の響きを重視した結果、まるで詩に導かれるような軽やかな筆運びを味わった。
生死について取り扱う作品に挑戦したかったし、このタイミングならチャレンジできるかもしれないと思った。
塔和子さんは、元らい病患者であり、10代で強制隔離された上、重労働をこなし、結婚しても子供を持つことを許されなかった。
それでも、日常のささいな幸福感を瑞々しい感性により自ら増幅させ、生かされていることに感謝することを忘れなかった。
終曲の死に向き合う楽章では、giocosoで書いているが、死を軽んじているのではなく、むしろ反語的に表現したかったから。

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偶然ではありますが、作曲家の中に名古屋音大の先輩後輩(といってもだいぶ年の差がありそうですが)がいらっしゃいました。(左が野村朗さん、右が木村恵理さん)
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2015年9月19日(土)に同じく日暮里サニーホール コンサートサロンにて
『TIAA音の博覧会2015 PART 2 未来に残すべき俊英作曲家による作品群』が開催されます。
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時間: 12:30開演 (12:00開場)
 
料金: 全席自由 前売3,000円 当日3,500円
チケットはコチラでまだ販売されています。ぜひご来場ください。
 
プログラム:
池田文麿 作曲
「お七幻想」~芝居人形の為の~ 演奏:井上喜義(尺八) 井上久子(十三絃筝)
 
川越道子 作曲
未定(新作) 演奏:川越道子(ピアノ)
 
津布楽杏里 作曲
「やがて秋‥‥」 詩:立原道造
「アダジオ」 詩:立原道造
「唄」 詩:立原道造
演奏:津布楽杏里(ピアノ) 江原陽子(ソプラノ)
 
中村未央 作曲
未定 演奏:中村未央(ピアノ)
 
本田朝子 作曲
竹久夢二の詩による3つの小歌曲集 ~みどりの窓/くれがた/凧~
笑顔をわけあおう 演奏:本田朋行(テノール) 中野亮子(ソプラノ) 本田朝子(ピアノ)
 
川村菜穂子 作曲
月に琴弾きたるを聞きて ~紀貫之の和歌による3つの小品~ 演奏:古川真帆(ファゴット) 丸山佳織(ファゴット) 川村菜穂子(ピアノ)
 
松下行馬 作曲
島神楽Ⅱ 演奏:板井美知(ソプラノ) 細川恵美子(ピアノ)
 
北川真里菜 作曲
ピアノのための小品 Ⅰ.「黒」 Ⅱ.「白」 演奏:北川真里菜(ピアノ)